―出品作品「面」について
僕はテーマを与えられた。それが能・狂言。
僕が幼い時、幼稚園に行くまでに住んでた家かな。隣で、能面をつくってる能面師がて、うちの親父がその人の能面をいっぱい見せてもらうことがあった。それで非常に欲しくなってきて、譲って頂いた経歴があって。その後、うちにその能面がずっと飾ってあた。こんな話(府からの依頼)頂いたときに「あ、そう言えばうちに能面あったぞ」って思って。探したら出て来た。だから、小学校ぶりに見たのかな。その話を府の人にしたら、そのエピソード自体が京都っぽいエピソードって言われて。
久し振りに押し入れから能面の箱を出して来て、能面を手に取った、という風景を描いた。僕が幼い頃を思い出して、能面を押し入れから引っ張り出してきたぞ、っていう絵やね。
取材は片山九郎右衛門さんにお話を聞きに行った。話を聞けば聞くほど「簡単に描いちゃいけないな」て思ったな。
能に詳しくない僕には気付かないズレが、ちゃんとした人、その人からしたら大きなズレで、甚だおかしいっていう事になるんやろうな、て気はしたね。そこまで全部ひっくるめて、今回の絵になったな。
だからかなり緊張して描いた。特別素晴らしい能面を綺麗に描きました、っていうことじゃなくて、僕がこの面を幼い時に見てて、お化けやと思ったのね、気持ち悪いって、怖いって。トイレにも一人でよぉ行けへん所に飾ってあったんで。だからそのエピソードを描いたっていう感じなんかな。
―「こころの京都百選」について
テーマが与えられる、て話になると、僕はすごくポジティブにテーマをとらえる。
絵描きさんが切磋琢磨するんやったらこういう機会っていうのは、有り難く思う。
―日本画を選んだ理由
うちの親父が日本画家やったから。
美術には全く興味なかったし描けへんかったし、美術高校はデザイン科で習って、大学は日本画。それも、親が勧めてくれたから。
せやし目覚めたんは…、僕は器用やったんやけど、日本画だけはどうも描けへんかった。全く上手く行かへんので、夢中になっただけ。日本画は難しい!本当に難しくって、そうちゃっちゃ描けへんかったんよ。
―日本画への思い
多分ね、僕だけの判断じゃないような気がするね。特に僕、芸大の先生になっちゃったんで、余計にそれ思うようになったんやけれども。随分長い歴史の上に僕らがちょん、と居るような気がして。僕が潰すのは簡単やし、僕が教えないのも簡単なんだ。皆がそれぞれ日本画を勝手に、絵の具とかも使えるようになったら良いじゃないとか、勝手に自分の感性で描けば良いじゃない、と言うのは簡単なんだけども。それが何かこう、過去っていうものを切り離してしまってないのかな、って思うので。僕は、繋げる必要があんのかな、て思ってる。
せっかく、ずっと繋げてきたのになって思うねんな。でね、誤りもいっぱい見つかってんねんね。それを直しつつ、それでも答えがでない事に関しては、無責任な答えの出し方はせず、取り敢えずは問題を先送り、綺麗に先送り出来たら良いかなと思ってるね。