―出品作品「緑の府庁」について―
私はわりと、ヨーロッパの風景を最近ずっと描いてたんでね。府庁旧本館は京都の中では、ヨーロッパ的な要素のものなので、自分としては描きやすいかなぁということで。
府庁ですから明治以降、 洋風建築が京都に建てられて、西洋化していく一つの象徴なのかなぁと思って。私神戸に住んでるんで、何となく洋館って親近感もあるし。
府庁の何を描くかっていうのにはちょっと時間掛かってんね。府庁をじっくり見てみようと思ったら、中庭の辺りがちょっと修道院の中庭のようでちょっと静寂感もあったりしてね。職員の方が昼間、佇んでいるのも良いなぁと思ったりして。で、結局は迷ったんだけども、釜座通りの並木道と庁舎の建物という事で。制作はねぇ、僕下絵がわりと掛かってるんで…制作としては三ヶ月ぐらいかな。
下絵っていうのが、僕の中ではある時期から大事になっていって、小下絵で色々、現場で感じたことを絵にしたいことをシミュレーションして、それが決まったら今度、反対に細かい描写を自分の気持ちで、必要の無い所は省略していく。だから写生や下絵では府庁の建物もかなり克明に描いてたり、並木道も細かく描いてるんやけど、本画になったら結局、要らんもんをだいぶ消していったりもして、オブラート掛けていってるけど。
―「こころの京都百選」について
私はどっちかと言うと他の方に比べたら主観的な要素のちょっと薄いタイプの絵だから、他の方が主観的に、どんなふうに、えぇ意味で、自分の我を通すような絵を描きはるかな、というのを見れるのが楽しみかな。
僕はかえって、観てもらってる人が喜んでくれる事が嬉しいっていう事もあるでしょう、別に媚びるんでもないねんけども。絵を描く事を通じて、観る人に何か喜んでもらったりっていうような事も、一つの要素でもあるから。最低限、観る人に近寄りながら、自分の我も通すって言うかな。最初はこう感じてたんやけどね。でもこの頃はやっぱりもうちょっと、我を通すような事もせないかんかなと思って、考えてるけど。
―日本画を選んだ理由
僕の出身の学校が東山魁夷さんと小磯良平さんっていう日本画と洋画の二人の出身高校で。
最初は小磯良平さんに惹かれたんやわ。で、油絵やってて。卒業が終わった時点で初めて日展見て、それで日本画と洋画をまとめて見た時に、その時に日本画の持ってる、感覚的に、小綺麗さとか清潔感とか、それからギラギラ感の無いマットな感じとか、そういうものが気に入って。それで、勉強するんやったら日本画が良いのかなあ、と思ったのかな。
―日本画への思い
私自身は日本画の絵の具って、もの凄く面白いんですよ。粒子が色々あることの、選択肢の多さね。日本画の場合は一つの色に対して、粒子の変化があるしね、工芸的な要素もあったりして。表現が古典的な技法だけども、もの凄く、私自身としては色々面白いことがいっぱいあるんやけど。 まず、魅力的な絵であってね、それがたまたま日本画の絵の具を使ってるっていうことで、技法があとから、付いてくるようになったら良いなぁと思うんですけど。
今、表現方法がデジタルや何やなってくるでしょう。で、その時にね、やっぱり日本画は日本画らしさを持ってないと、結局、かえって存在価値がないと思うのね。日本画は日本画の本来持っている何か、もっと長所を打ち出していかんと、その存在感はなくなるん違うかなぁと思うから、何となく日本人として、共通に認識し合える日本画観があって、その範疇を大事にする方が良いのかなって思うことはあるなぁ。